これは私が学生のとき。
一瞬夢を見たアルバイトのお話です。

今から考えると
なぜ良さそうと思ったのか疑問です。

でも、人を集めるのに
ヒントはあるお話でした。

 

夢を売る仕事

 

私は学生の頃から
文具が大好きな子供でした。

文具を見ているだけで
幸せです。

そんなとき、一枚の求人が
目に留まりました。

”世界中の文具を販売しませんか?”
”あなたのアイデアを活かせるお仕事です”

心躍るキャッチコピーです。
早速応募してみました。

 

面接会場に行くと、
10人くらい集まっていました。

説明はこうです。

海外に生産工場を持っていて、
資本も海外から出ている。

そのため格安で商品を提供でき、
売れ筋のものを本格的に商品化する。

その商品化する前の
サンプルの販売をして欲しい。

「なるほど~」
と感心していたのは、そこまで。

 

販売の方法が問題でした。
リヤカーで個別に家庭訪問をする。

行商のような販売方法だったのです。
「イヤだ~」と逃げ出したい。

でも、周りがそうはさせてくれません。

先輩バイヤー(そういう呼び名でした)
同行で、いきなり仕事が開始。

お試し体験という名の、
行商が始まりました。

 

商品を始めて見ると、
とてもチャチなモノ。

原価100円くらい?
それを1,000円で売るという。

案の定、ほとんど門前払い。

「帰りたい」と言えない私は、
ひたすら先輩と歩きます。

信じられないのですが、
100件に1件くらい買ってもらえるんです。

そうすると、おかしい現象が。
「やればやるほど売れるんじゃ・・・」

100%勘違いなのですが、
変なアドレナリンが出てきます。

 

ヘトヘトで事務所に帰ると
そこから洗脳が始まります。

「今日1日体験して分かったでしょう。
 必ず一定の確率で売れるのです」

「そして、売れた分だけ昇格します。
 あなたのセンスを生かした商品が
 作れるようになるのです!!」

ヘロヘロの脳みそに
シャンパンが染みこむように

何だかその気にさせられるのです。

 

帰り道、
「おかしい」という天使の私と
「おかしくない」という悪魔の私。

悩んだ末、友達に電話しました。

「100%騙されてるで!」

友人の声で我に返りました。

 

夢を持たす

 

今から考えたら
アホもいいところです。

でも、隔離された部屋で
成功体験を聞き続ける。

そして、将来の夢を語られる。

今はシンドイけど、
将来は間違いなく明るい。

感情を持っていかれると、
思考は勝てません。

騙すのはいけませんが、
感情に訴えるのはとても有効です。

 

あともう一つ。
必ず買ってくれる人がいる、ということ。

この商品は詐欺に近いですが、
商品に共感してくれる人は、
探し続けたら必ず出会える。

それがわかったことが
私にとって収穫でした。

 

まとめ

 

この話には後日談があります。

ある日家に帰ると、
見たことのある置時計が。

そう、あの行商で売ってた時計。

「これどうしたん?」

「エエ時計やろ、1,000円で買ったんや」
と父。

「会社に売りに来はったん?」
「そうやで」

 

たった1%の客が、家にいたとは・・・

騙されやすいのは、家系かもしれません。

 

 

 

 

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